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『ドラゴン桜2』(三田紀房/講談社)

ドラゴン桜2』(三田紀房講談社

週刊モーニング(毎週木曜日発売)にて連載中、既刊5巻

公式サイト:https://dragonzakura.mitanorifusa.com/

 

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対象:学生・社会人問わず全般

キーワード:勉強法・精神論

 

 『ドラゴン桜』という漫画をご存知だろうか。

偏差値30台の高校3年生が1年間猛勉強をし、東京大学に合格するという内容の、もう10年近く前の漫画だ。

あらすじだけ見ればほとんど『ビリギャル』、よくあるサクセスストーリーなのだが、『ドラゴン桜』の評価された点はストーリーそのものではない。

そこに描かれた「勉強法」、そして東大受験に際しての「精神論」こそが、『ドラゴン桜』のエッセンスだった。

勉強が大嫌いな筆者がいざ中学受験!という頃、教育熱心だった父が「勉強したくなければ、せめてドラゴン桜を読め!」と全巻大人買いしてきたのは、今でも覚えている。当時は大学受験などまだ遠い未来のことだったので、そこに詰め込まれた勉強法や精神論の全てを理解することは難しかった。しかし、今にして思えば、なるほど!と思う事柄で満ちていたと思う。

 

さて、受験業界に一筋の風を吹き込んだ『ドラゴン桜』から時は経ち、社会は変化した。インターネットやスマホを始めとしたいろいろなものの進化とともに、生活も、教育も、受験すらも変わった。

かつて『ドラゴン桜』が吹かせた風も、今では壊れかけのエアコンの送風程度になろうとしている。

そこに颯爽と現れたのが、この『ドラゴン桜』だ。

「1年で東大を目指す」というテーマはそのままに、それぞれの状況が10年前とは何もかも変わっている。学生の心境描写から、語られる勉強法まで、何もかも。前作を現代にアジャストしたのだ。

今の受験生が『ドラゴン桜』を読んでも、もちろん得るものは沢山あるだろう。しかしそれらはあくまで10年前のスタンダードだ。それを今の自分に適応させられるかは、また別の課題となる。ドラゴン桜2』は、現代に合わせて描写することで、そこをしっかりとフォローしてくれている。

 

ストレートに言おう。勉強に飽きたら、息抜きに『ドラゴン桜2』を読んでみて欲しい。

既刊5巻+週刊連載なので、勉強の合間合間に読み進めたって、誰にも文句は言われない時間でしかないだろう。

 

作中で語られる具体的な勉強法を紹介しようとなると、これまた莫大な量になるので、そこは是非ご自身の手で読んでみて欲しい。

あえて1つだけ、ここで語るとすれば、『ドラゴン桜2』第1巻に描かれている

「頑張るな」

という教えだ。(第1巻・7限目参照)

 

“今後・・・・・・二度と「頑張る」とは言わない”

“「全力」「がむしゃら」「必死」これらの言葉も今後使わない”

東大を目指してこれから勉強を始める生徒に、主人公・桜木が放った言葉だ。

「頑張ろう!」と意気込んだ経験は、誰にでもあると思う。では、「頑張る」とは一体何をすることだろう。例えば受験生だったら「勉強を」、スポーツ選手であれば「試合を」、というように言うことは出来るが、「頑張る」という言葉は依然として漠然としている。

桜木は作中で、「頑張る」という漠然としたものではなく、「なんのために、何をする」と具体的なイメージをしろと語る。機能的に考え、口に出す(またはツイートする)ことで、行動に移しやすくなるということだ。

「試験勉強頑張る!」ではなく、「数学の試験で点数を取るために、苦手な二次関数の練習をする!」と言えば、やれば良いことは明白になる。

 

そしてこれは作中に書かれていたわけではないが、「頑張る」に関して筆者からもう1点。

「頑張り」そのものに満足してはいけない

筆者は努力するのが嫌いだ。努力は報われないからだ。「頑張った」、「努力した」と自分自身で思えば思うだけ、その報われなさは肥大化する。「頑張ったんだからいい結果が出るに違いない」と信じれば信じるほど、理想と現実が乖離していく。

頑張ったのに結果が振るわなければ、誰だって頑張るのが嫌になるだろう。それが辛く苦しいと感じがちな受験勉強であればなおさらだ。

だから、「頑張らない」。「頑張った」と思わないでほしい。

努力とは、気づかないうちに背後に伸びている足跡のようなものだ。少し良い結果が出たときに、たまに振り返ってみて、「頑張ったなあ」と思うくらいが、きっとちょうど良いのだ。

「頑張る」ことは、ゴール=目的ではない。

 

dragonzakura.mitanorifusa.com

 

(文:点P)