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『TED(Technology Entertainment Design)』(リスニング)

TED(Technology Entertainment Design)

~各分野の専門家たちが繰り広げる、最先端のプレゼンテーション~

 

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www.ted.com

 

対象:高校リスニング中級~上級、大学生(スピーチによる)

キーワード:リスニング、テーマ学習、教養、生涯学習

 

 

 【TEDとは】


TED(Technology Entertainment Design)は、様々な分野の専門家たちが行う講演(conference/presentation)、ないし講演を主宰するニューヨークの非営利団体のことです。

その公演は、上記のホームページから無料で閲覧することが出来、講演の書き起こし(transcript)も添えられています。
ですので、単純な大学生~大学院生の教養としてだけではなく、高校生のリスニング教材としても応用可能なものになっています。


【TEDの優れている点】

①公式が発表している無料動画であること

TEDは前述のとおり、ニューヨークの会社が運営する公式サイトで無料視聴できるものとなっています。
無料であることは、利点として最重要ですが、公式のものである点も見逃せません。
現在、YouTubeなどの動画サイトにもたくさんの英語教材となり得る動画がアップロードされていますが、それらに挟まれがちな広告などのリスニングの集中力を削いでしまうものがありません。
また、動画が消えてしまうこともありませんし、動画の次のサジェストもTEDの講演ですから、ネットサーフィンにうつつを抜かしてしまうこともありません。

②講演の書き起こし(transprict)があること

リスニングの練習において、どのタイミングでscriptを見るかは難しい問題ですが、scriptを確認しやすいこと自体は、大きなメリットになります。
まずscriptが無いと、


そのリスニング音源が、自分のリスニング能力の問題で難しいのか、それともリーディングの段階から難しいものであるのか、の確認が出来ない

ということが起こります。

また、シャドーイング(shadowing)*1やディクテーション(dictation)*2を行う場合は、徹底してscriptを見ないことも効果的な方法ですが、多くの方は通学時間などのスキマ時間に聞くことになると思います。
そういった場合に、「聞きっぱなし」にしないという意味でも、scriptは復習の際に大きな手助けとなります。

③聴衆に向けた講演であること

TEDは、TED会員に向けた講演であると同時に、全世界に公開されることが約束されたものです。
当然、専門家が同業者に向けて行ったものではありませんし、聴衆も(ある程度興味があることを前提としているとはいえ)幅広い聴衆を意識されています。
そして、そういった聴衆が意識されているからこそ、TEDの講演は、内容がかみ砕かれ、はっきりとした発話で、それでいて教材用の文章のような「作られた難易度」がありません。

例えばリスニング教材に収録されている音源のほとんどは、「設問に答えるにあたって聞いておけば良いポイント」がどうしても存在してしまいます。

TEDはそのような「作問された教材」ではありませんので、純粋なリスニング教材として優れていると言えるでしょう。

 

【おすすめのTED講演 4選】

①Yuval Noah Harari: What explains the rise of humans?
 
まず最初におすすめしたいのは、
『サピエンス全史(Sapiens: A Brief History of Humankind)』で有名なイスラエル歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリ氏の講演です。
大学受験英語との題材の近しさもさることながら、最も注目するべきは彼の英語の発音の聞き取りやすさです。

正直なところ、少ない経験とはなりますが、筆者が生涯で聞いた英語の中では、最もクリアな発音で、初めて聞いた時の驚きは凄まじいものでした。
英語が母国語でない我々が目指すべき発音の終着点の一つと言えるでしょう。
また、発話のスピードや間の取り方も丁寧で、単語や文法も平易なものばかりです。

彼のこの講演は、TEDにおいて、最も聞いて欲しい講演の一つとなっています。
 

www.ted.com

 

日本では『Whyから始めよ!』の著作で知られる、イングランド出身の講演家、サイモン・シネック氏のリーダー論です。
アップル、ライト兄弟マーティン・ルーサー・キングなどを手掛かりに、優れたリーダーに備わる共通項を説明しています。


先のハラリ氏に比べるとリスニングの難易度は上がっていますが、単語自体は難しくなく、何よりネイティブスピーカーとしての講演は、一度聞いておくと、これから様々なリスニングをしてゆく受験生の皆さんにとって大きな糧になるでしょう。

尚、この動画は「TEDで17,000,000再生された!」と有名になった*3ものなので、全世界で聞かれている講演とはどういうものなのか、ということ知るという意味でも有益な動画だと思われます。

 

③Tim Urban: Inside the mind of a master procrastinator

 

www.ted.com

 

ブログ「Wait But Why」の設立者の一人、ティム・アーバンの講演です。


三つ目におすすめするこの動画、最初に謝罪をしなければなりません。
この動画のリスニングは正直難しい部類に入るとは思います。
では何故この動画を紹介しようと思ったのか。
それはこの動画のトピックが

「締め切りに対して、しっかりと作業を進めて行けばよい結果が出るのは分かっているのに、先延ばしにして前日の徹夜に頼ってしまう人の頭の中は一体どうなっているのか」

 

という、非常にユニークなものになっているからです。
受験生の皆さんにも、このトピックは頭が痛いものなのではないでしょうか?
(筆者はいまだに頭が痛いです。)

このトピックは会場にも笑いをもたらしており、非常にリラックスしながら聞くことが出来ます。

リスニング教材としては不適切かもしれませんが、受験生の皆さんにはぜひ興味を持って欲しいトピックだったのでご紹介致しました。

 

④Yoichi Ochiai : Physicalization of computer graphics
 
 

www.tedxtokyo.com

 

最後に紹介する講演*4は日本人によるものです。
話者の落合陽一氏は、筑波大学准教授で、世界で多数の受賞歴のある若手研究者です。

この動画も、実際のところリスニング教材として以上に、皆さんに聞いて欲しい理由があります。

 この講演を聞くとまず、「あんまり英語がうまくない...?」と思われるでしょう。
「英語のうまさ」というものがあるとして、それをネイティブらしさとするなら確かに落合氏の英語はうまくない、ということになるでしょう。
しかし注目してほしいのは、彼は実際に海外で研究成果を発表している人であり、事実として彼の英語は伝わっている、ということです。

皆さんの中には英語のスピーキング、特に発音に苦手意識がある人も多いかと思われます。
そこで重要なのは「何かを"伝わる英語"を話そうとする」のではなく、「"英語を話す"ことで何か伝えようとする」ことです。
もちろん、綺麗な(≒ネイティブらしい)発音や表現は目指すべきことですが、それは到達目標の一つであって、ネイティブらしくなければ英語ではないなんてことはありません。
 
落合氏の講演は、そういった点に気付かせてくれる、第一線で戦う人の「実用的な英語講演」 と言えるでしょう。
(こう書くと、落合氏の英語の拙さを反面教師的に使えと言っているようですが、全くその意図はありません。筆者の表現力不足をご容赦ください。)

一つ注意点としては、公式の動画では同時通訳がついてしまっております。
純粋なリスニング教材としてはその点でも不向きなのでご容赦ください。
 

【総評】

 
上記のTED、いかがでしたでしょうか。
もし今ご覧になっている時期では、「ちょっと難しいかも」ということがあったとしたら、その時は全く無理をする必要はありません。

ただその際もぜひ、TEDという動画サイトがあることだけは心の片隅に置いておいてください。
そこには皆さんが目指している大学で学ぶようなトピックの種がたくさん詰まっております。
 
この記事をもとに、何であれ、英語を学ぶことで開ける知の世界の扉の一つを知っていただけたら幸いです。
 

 

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waitbutwhy.com

 

 

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文責:注b
 
 

*1:リスニングで、音減を聞いた後すぐに、聞いた音声をそのまま追うように復唱をする練習法

*2:聞き取った音声を、そのまま書き起こしてゆく練習法

*3:2019/5/1現在で43,000,000超

*4:正確にはTEDではなく、TEDxTokyoという事業。TEDの理念「ideas worth spreading」をもとに、TEDからライセンスを受けたコミュニティーの一つ。