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『基礎 英文問題精講』(中原道善/旺文社)


 『基礎 英文問題精講』(中原道善/旺文社)

~「単語を覚えた」から「覚えた単語を活用する」へと橋渡しをする良書~

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対象:高2~私立大受験まで

キーワード:英文解釈、構文解釈

 

旺文社の英語参考書、「精講シリーズ」の、構文解釈に関する基礎編。
同シリーズでは、難解さで有名な『英文標準問題精講』(原仙作)があるが、それと比べるとこちらは収録されている英文の難易度も標準的で、幾分か古めかしさも軽減されている。

構文解釈に関する、と先に述べた通り、この本は

 

「単語帳はしっかりやったはずなのに長文が読めないぞ....」

 

といった悩みを抱えている方々への入り口となるものである。
(ただし、この悩みはしっかり勉強している証でもある)

例えば冒頭の一節を見ると

     We must realize that television in itself is neither good or bad.
    
     It is the uses to which it is put that determine its value to society.

一文目は問題ないとして、二文目はなかなか訳出に苦戦する方も多いのではないだろうか?
因みに筆者は高校一年生の夏くらいに見て、ちんぷんかんぷんだった記憶がある。(多少思い出補正で難易度を高めに見積もっているかもしれない...)

先の文章は、
It is ~ that ...(...なのは~だ)という強調構文が骨格であることを見抜き

put ~ to use(~を利用する)というイディオムを理解(もしくは連想)し


③頻出するitやitsなどの代名詞文脈内で何を指すのかを整理する

といったことが必要になってくる。

このような強調構文や文章中のto which(「前置詞+関係代名詞」)、そしてそれに類似する関係副詞などは、文法事項の後半で習い、あまり演習の機会がないことが多い。

その意味で本書は文法事項の学習が大体済んでくる高校二年生あたりからの利用に適していると言えるだろう。

 

【使い方】

 本書は「構文編」、「文脈編」、そして「応用問題編」との三編、計80の例題から成っている。(応用問題や練習問題を除く)

分量からして全部をやり通すのは凄く厳しいし、一方で昨今の英語の長文化からすると少し短い文が多い。
まずは本屋で本書の例題1~3あたりをパラパラとめくってみて、例文を頭の中で訳してみよう。
例文の後に語句をいくつか説明してくれているが、それらの語句にそこまで難しいものはないはずだ。(もしここで分からない単語が頻出するのなら素直に学校の教科書や単語帳にUターンしよう)

そして自分で考えた訳文と照らし合わせる時に、目を通すであろう解説、少し堅苦しい書き方をしている本書の解説が肌に合ったなら、以下のやり方でやってみると良い。

まず、「構文編」。

こちらは頭から一問一問やる必要はない
学校の教科書や学校指定の参考書で扱った文法事項を目次から見つけて、少しずつやってみよう。


次に、「文脈編」。
こちらは少し親切な仕様がある。
例えば「例題41」はitの用法についてのものなのだが、例文のitが「itのように太字にしてあって、意識して演習しやすいようになっている。
こちらは全体で20問ほどなので、一週間に一問といった形で継続的にやってみると良いだろう

どちらにも共通するのは、しっかりノートなどの残るものに自分の訳文を記録すること。
この手の本は読む際の思考法はあまり記してくれていないので、あまりはっきりと訳文を用意せずに答えを見てしまうと、「うんうん、大体あっている気がする」といった感じでなぁなぁな学習で終わってしまいがちなので注意

「応用問題編」は無理に行う必要はない。
先に言った通り、少し古めかしさがあるので、素直にこの後はword数の多い長文に挑戦してみたほうが良いだろう。


【総評】

やや古めかしさはあるものの、単に単語をあてはめる訳出から「文の構造を理解する」段階へと引き上げるスタートラインとなる良書。
単語帳をある程度こなし、文法事項の学習が落ち着き始める高校1年生後半~2年生前半あたりにぜひ挑戦してみよう。

文責:注b